少しご無沙汰してました。
なはねふ喫茶室では11月の模型展示としてP&Oラインの客船を展示中です。
詳しくは喫茶室ブログをご覧ください。
昨今はCovid19感染症の世界的拡大で交通・旅行業界も大きな打撃を受けています。
一方でアフターコロナを見据えて準備している事業者も多いのではと思います。
来年こそは収束して活気が戻ると良いですね。
北海道は増え続けていますが・・・
さて、そんな中ですが最近思っていることを少し書いてみたいと思います。
あくまで個人的主観で書きますのでご意見など頂けるとありがたいです。
長くなりますが1960年代の客船からお話しいたします。
管理人の客船趣味との出会いは父が定期購読していた世界の艦船1969年11月号の特集「世界の客船ビッグ20」でした。
客船の優雅な佇まい、一目で船名が分かる個性的な外観に虜になってしまいます。
それからは世界の艦船に登場する客船の記事を読み漁りました。
しかしながら当時は世界の客船業界は定期航路衰退~クルーズへの変革が始まっていました。
それまでの定期航路客船は大型で高速船が良しとされてきました。
大型で速い客船は30ノットで航行できました。
クルーズ船は観光地やリゾートを巡るいわゆる遊覧船ですからスピードや規模は必要としません。
定期航路船で一般的な1等~3等という等級別にサービスレベルを区分する必要もありません。
これは少々分かり辛い話ですが定期航路客船では各等級別に専用のレストラン、ラウンジ、バー、図書室、喫煙室 などが備わってます。
クルーズ船では各公室やレストランなどすべての乗客が自由に使えます。
このように定期航路客船とクルーズ船では内容が違うのでそのまま転用出来ないことが多かったようです。
また大型で高速の客船は運行経費がかさみクルーズで収益を上げるのは難しい状況でした。
さらにクルーズで寄港するリゾートや観光地は港が小さく大型船が停泊できる港が少なかったため、クルーズに適しているのは2万総トン前後の小型船とされました。
こうしてクルーズに転用出来ない大型の定期航路船は次々と引退に追い込まれました。
世界の艦船では1976年と79年に世界の客船ビッグ10という特集を組んでますが、大型定期航路客船の引退を嘆き今後も大型客船が作られることはないだろうと結んでいます。
一方でクルーズ市場には徐々に新しい風が吹き始めていました。
それは老舗海運会社ではなく初めからクルーズをビジネスとする新しい会社です。
新興勢力のクルーズ船運航会社は2万トンクラスの客船を次々と建造しました。
クルーズ専用設計の客船は評判が良く業績も好調に推移しました。
需要の増加に伴い新しいクルーズ客船は少しずつ大型になっていきました。
客船の大型化→サービスレベルの向上と運賃の低価格化→需要の拡大→さらに大型化
の好循環が生まれてきます。
港に停泊できないという問題はランチャーボートに乗り換える方法でクリアしました。
そしてとうとう7万総トンを超えるクルーズ客船が登場し市場は一段と活況を呈してきます。
この頃からクルーズ船でリゾートを巡ることよりもクルーズ船そのものに乗ることが目的に変わってきたように思います。
クルーズ・ビジネスは完全に大型船で稼ぐ時代に入り、競争も激化していきます。
往年の大型定期航路客船が慢性的な赤字を政府が補填しながら何とか運行していたのとは違い
大型クルーズ客船によるクルーズ産業は儲かるビジネスモデルに成長しました。
世界の艦船1979年4月号に掲載の「なつかしの巨船たち18 クイーンエリザベス」では
全長313m、83,673総トン、20万馬力・・・このような大型客船が今後二度とわれわれの前に姿を現すとは考えられない・・・と書かれています。
この号掲載の世界の客船ビッグ10は
1・・・クイーンエリザベス2 67,107総トン
2・・・キャンベラ 43,975総トン
3・・・オリアナ 40,340総トン
と続き
7・・・フェスティバーレ 26,632総トン
となります(途中省略)
このフェスティバーレという客船のオペレーターはカーニバル・クルーズ・ラインという新しい会社です。
南アフリカ航路用の貨客船をクルーズ船に大改造しました(日本で改造!)
この会社が後に世界一のクルーズオペレーターになるとは誰も予想していなかったのではと思います。
10年後の1989年になると
1・・・サブリン・オブ・ザ・シーズ 73,192総トン
2・・・ノルウェー 70,202総トン
3・・・クイーンエリザベス2 66,450総トン
4・・・スター・プリンセス 63,524総トン
となり
8・・・キャンベラ 44,807総トン
という感じで大型の新しい客船が誕生し始めています。
そしてこの後も7万総トンクラスが増えていきます。
7万トンクラスのレジェンド・オブ・ザ・シーズ(ロイヤル・カリビアン)
カリブ海に張り付いていた同社の客船も頻繁に日本に来航するようになりました。
小型客船のにっぽん丸(商船三井)
2000年になると
1・・・ボイジャー・オブ・ザ・シーズ 137,300総トン
2・・・グランド・プリンセス 108,900総トン
3・・・カーニバル・デスティニー 101,353総トン
など・・・
10万総トン超のクラスが続々と登場し大型化競争に拍車がかかってきます。
1940年以来長らく史上最大だったクイーンエリザベスの83,000総トンをはるかに上回り、しかも同型船が複数作られるという凄い状況になってきました。
ダイヤモンド・プリンセスは近くで見るとファインダーに収まらないほど巨大です。
クイーンエリザベスより遥かに大きな客船が日本で作られる時代が来るとは!
それでは今年2020年はどんな感じか調べたところ・・・
1・・・オアシス・オブ・ザ・シーズ級 228,000総トン(RCI) 4隻
2・・・スメラルダ級 185,000総トン(コスタ) 2隻
3・・・アイーダ・ノヴァ級 183,800総トン(アイーダ) 3隻
4・・・MSCグランディオーサ 181,000総トン(MSC)
5・・・マルディ・グラ 180,800総トン(カーニバル)
6・・・MSCメラビリア級 172,000総トン(MSC) 2隻
( )は運航会社
もう順位はどうでもよいくらいの規模ですよね。
北大西洋定期航路運用もこなすクイーメリー2は148,328総トンで29位
先ほどのダイヤモンド・プリンセスは115,875総トンで64位くらいです。
15万総トン以上は28隻、10万総トン~15万総トン未満は61隻もあります。
さらに建造中もしくは竣工したての客船で15万総トン超が3隻もあります。
クルーズ船は10万総トンクラスが当たり前の時代になりました。
ただし、パナマックス型(パナ運河通過可能なサイズ)の客船は9万総トンくらいが上限ですがそれでも十分に大きなサイズですね。
さて写真は横浜大桟橋で撮影したトパーズというオールドタイマーの客船です。
1956年、イギリスの客船エンプレス・オブ・ブリテンとして建造されました。
後に売却され1975年、カーニバル創生期の2番船カーニバーレとなります。
カーニバルは元南アフリカ航路用の客船を購入し3番船フェスティバーレとしました。
4番船のトロピカール以降は新造船を作り続け現在では世界一のクルーズオペレーターとなりました。
写真のトパーズ(TOPAZ)は晩年、ピースボートがチャーターしたものです。
この後数航海した後、引退したようです。
カーニバルに移った際、クルーズ船として大改造されたようです。
カーニバルの客船のコンセプトは創業時から一貫してファンシップです。
乗って楽しい船をコンセプトにあらゆる層とあらゆる世代に楽しんでもらえる客船を提供してきました。
あらゆるタイプの乗客、独身者、ファミリー層、老夫婦、などすべての乗客に満足なサービスを提供するということです。
そして巨大客船のメリットを生かして非常にリーズナブルな価格で乗船できるようです。
小型のクルーズ専用客船が登場して半世紀ですごい成長となりました。
昨今の巨大クルーズ客船はまるで大きなリゾートホテルのようです。
海を自由に移動できる巨大クルーズ船は陸地に固定されたホテルよりもある意味リスクの少ない投資かもしれませんね。
コロナ禍のなかで業績は急ブレーキのようで少し古い7万総トンクラスの客船は売りに出たりスクラップになったりしているようです。
オペレーターはアフターコロナを見据えていろいろ準備をしているのかなと思います。
飛鳥2(4万8千トン)より新しい7万トンクラスの客船も売りに出ているようです。
どこかで購入して国内でクルーズ運行してくれたらなあと妄想しております。
では鉄道の方はどうでしょうか?
なんか最近イマイチですよね~
身近に利用するものとしてここ10年間、本当にサービスが悪くなったなあと感じます。
相次ぐローカル線の廃線、特急列車のホスピタリティの低下・・・
鉄道には頑張ってほしいなあと思いつつ、なんとも寂しい気持ちになります。